4−14 アルファとリーダー 「・・・止めを刺さないのか? ・・・まあいい。で、話ってのは?」 「あなたは、・・・あなた達は”群れ”でいるのよね?」 「・・・そうだが?」 「じゃあ、群れの中で一番強いのは誰?」 「・・・俺だ。」 「あなたの群れを統率してるのは誰?」 「・・・俺だ。」 「人間の姿じゃ、ずいぶん若い感じだったけど、あなたがリーダーなの?」 「・・・そうだ。俺が一番強いからな。」 「もし、あなたの群れの誰かが、あなたに挑戦して、あなたを倒したら、その人が新しいリーダーになるの?」 「・・・まあ、そんなことは起きないだろうが・・・まあそうだな。一番強いものがリーダーとして群れを率いるものだからな。群れは生き残るためにリーダーに従うものだ。」 「ふーん、じゃあ、あなたを倒した私は、あなたの群れのリーダーになれるの?」 「なん・・・だと?」 『・・・おいおい、どうするつもりだ?』 「(手下みたいのがいたらどうかと思って。)」 『”群れ”を統率するなんて、俺にはできないぞ。』 「(フォスは最近、いろんな所へ行って情報取集してるんでしょ?)」 『ああ。』 「(でもフォスだけじゃ効率悪くない?)」 『それに人狼の連中を使おうってか?』 「(ダメ?)」 『おいおい、それ以前に、お前に従うのか?』 「・・・おい、さっきから黙ってなんなんだ。とりあえず降参するから、これを抜いてくれないか?」 「・・・もう一度確認しとくけど、群れの中であなたが一番強いのよね?」 「そうだ。」 「狼って、遠吠えで連絡できるんじゃないの?」 「・・・まあ、そうだが。」 「じゃあ呼んでみて。」 『おいおい、正気か? 人狼の群れなんてどう扱ったらいいか知らないぞ。』 「(ちょっと試してみたいことがあるの。私に任せて。)」 ワォォォォゥゥゥゥゥ!!! 人狼が吠える。それからほんの数分で、周囲から集まってくるのを、フォスとアヤカは粒子の放出を見ることで感知した。大半は青の粒子を放出している。これは委縮を意味する。集まってきたのは7人ほど。男が4で女が3。男の内の1人は、赤の粒子を大量に放射していた。これは怒りを意味する。 「おいケンジ、ざまぁねえな。」 「けっ、言ってろ。」 「安心しろケンジ。俺が敵をとってやるさ。」 その男は上着を脱ぎ棄てると、変身を開始した。こっちもグラヴィトンで縫い付けられている人狼と同じぐらいの体格で、毛皮が黒だった。 『やっぱりこうなるか。アヤカ、グラヴィトンを抜け。』 「(・・・大丈夫。)ふぅん、群れじゃ一番でも無いのに、私を倒せるの?」 「はっ、お前こそ、その剣がなければ大したことないだろ?」 次の瞬間、アカヤの姿が霞んだかと思ったら、その黒い人狼は宙を舞っていた。 ドッパーン 落下先は川のど真ん中だった。最初から不安そうな顔をしていた他の6人の顔が、さらに青ざめる。 「他に文句がある人は?」 アヤカはドヤ顔で見回す。青い顔をしていた6人は、同時に首を横に振った。 「別にとって食ったり、奴隷にしようってわけじゃないわ。いろいろと手伝いをして欲しいだけよ。」 アヤカは人狼の腹から剣を引き抜くと、一振りした。 Side.フォス 何かおかしい。いつものアヤカが話しているように思えない。グラヴィトンにはもう支配されていないはずだが・・・。 ・・・。 ・・・。 ・・・。 アレ・・・か? まさか・・・な。 ・・・確かめてみるか。 |