妖精竜の花嫁
〜Fairy dragon's bride〜


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4−6 工房と武器選び

 そのドワーフ−−−名前はガルドというらしい−−−に案内されて入った工房には、大量の武器が置いてあった。剣、斧、槍、ハンマーなど、金属でできた武器が多い。ごく少数だが弓も置いてあった。剣といってもナイフから全長2mはありそうな大剣まで、反りのあるものないもの、両刃のもの、片刃のもの。はっきりいって数が多すぎた。

「(ねぇ、フォス。)」
『ん?』
「(私、武器ってどんなの選んだらいいのかわからないんだけど。)」
「(そうだな。まず炎の魔神を切るために頑丈なやつ、それでいてアヤカが使いやすそうだと思うのにしたらどうだ? あとはガルドにおすすめのを聞いてみるとか。)」
「(わかった。)」

”がるどはん、ほのおにつよいの、どれ?”
”そやなー、これはどうや?”

 ガルドは両刃の斧を取り出した。柄を含めると全長は1mぐらいある。

”こいつはなー、アダマンタイトでコーティングしてんねん。あまりに硬とーて、刃付けるだけでひと月はかかったけどなー。はっはっはっ。”

 アヤカはその斧を持ってみたが、持ち上げるだけで精一杯だった。

”がるどはん、の、おすすめ、は?”
”お、よー聞いてくれたなー。このハンマーやな。柄は長いけと片手でも使えるバランスやねん。柄は複合素材にしとるから、柄頭からの衝撃もうまいこと逃がせるねん。この石突の部分は特別硬いの使こうとるから、突きにも使えるでー。それとなー・・・”

 自慢の一品を説明するために、ガルドは饒舌だった。どんどん早口になるうえに説明が長い。アヤカは途中から聞き取れなくなってしまった。

”ながすぎんねん。もーえーわ。”

 アヤカは手刀にした手の甲でガルドにつっこみを入れる。

”はっはっはっ、すまんのー。おっちゃん、ついうれしゅーなってのー。”
”・・・ふう、じゃあ、わたしに、つかえそう、なのは?”

 ガルドはアヤカを頭の先から足の先まで、じろじろと観察した。そして、掌を拳でポンと叩くと、武器が陳列してある棚をごそごそとかき回す。

”あったでー。これらな嬢ちゃんにぴったりやろー。どや?”

ガルドが出してきたのは、細剣だった。いわゆる「レイピア」なのだが、刀身は強度優先なのか、あまり細くない。しかし、持ってみると非常に軽かった。これなら使えそうだと、アヤカは思った。

”おー。”
”どや? これやったらお嬢はんにぴったりやろー? ミスリル製や。軽くて強度も抜群や。でも熱に弱いんやけどなー。”
”あかんやんけー!”

 アヤカは手刀にした手の甲でガルドにつっこみを入れた。

・・・

「(フォス、なんか言った?)」
『ん? 俺は何も言ってないが。』

 ガルドとアヤカが武器選びに苦労している間、フォスは空いている棚の端で休んでいた。

「(おかしいな。誰かに呼ばれてる気がするんだけど・・・。)」
『俺には何も聞こえないけどな。』

 ガルドに任せておくと終わらないと思ったアヤカは、自分で武器を物色しはじめた。ふと、棚の間、しかも床に落ちている長さ60cmほど剣が目についた。刀身がアヤカの手の幅ほどもある両刃の直剣だった。乱雑に棚に置いてあるとはいえ、床に放置されているのは、今まで1つもなかった。これだけが床にあるというのは、非常に違和感があった。

”がるどはん、ゆかに、おちとるで。”
”おー、それかー。ちょっといわくつきでなー。”
”?”

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