妖精竜の花嫁
〜Fairy dragon's bride〜


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3−9 級友と買い物

 土曜の午後からバイトを上がらせてもらうことになったアヤカ。委員長と双子は、そのファミレスで昼食にすることにした。金銭に余裕のないアヤカは、当然、昼の賄いを食べてから上がりとなる。

「おまたせ。」
「・・・」
「あちゃー。」
「そうなりますかー。」

 ファミレスの裏口から出てきたアヤカは、ジャージ姿だった。委員長と双子は、三者三様の反応を見せるが、三人からはそれぞれ緑と青の粒子が放出されていた。これは失望感を表すらしい。

「よし、それならバッチリいいのを選んであげるわ!」
「おー、委員長気合い入ってるー。」
「お、お手柔らかにね・・・」

 ローテンションからハイテンションにギアの入る委員長。アヤカは委員長から放出される粒子の激変と、ハイテンションになって放出される黄色とオレンジの粒子の量に圧倒されてしまった。

「ねー、やっぱスカートはミニの方が可愛いと思うなー。」
「いやいや、白沢さんは身長ある方だから、大人っぽくロングスカートも似合うと思うよー。どう、委員長?」
「うーん、白沢さんの身長なら、これとこれで・・・これくらいにしてみて。」

 アヤカは着せ替え人形のようにどんどん試着させられた。しかも、どの服を選ぶかについては、アヤカの意見はほとんど反映されてない。最初はいくつか選んでみたのだが、センスが無いという理由で却下されていた。途中、白のブラウスと抑え気味な発色のライムグリーンのスカートの組み合わせが高評価となり、そのまま着ていくことにする。

 買い物は服にとどまらず靴屋も何件も回った。当然とばかりに化粧品の店も連れていかれる。

『げほっ、げほっ・・・』
「(フォス?)」
『ここの空気は酷すぎる。俺は外で待ってる。』

 その店は化粧品の臭いが充満していた。フォスはふらふらと飛びながら、外の街路樹の枝に着地した。

 委員長と双子は、アヤカに合うものを探して店内を歩き回る。店員はアヤカが通ると積極的に販売をアピールしてくる。ふと、その店員の中にピンクの粒子を飛ばしてくる人がいた。態度は委員長と同じように世話を焼きたいように見えるのだが、何が違うのか?

「(ねぇ、フォス?)」
『どうした?』
「(あ、通じた。)」

 店外にいるフォスは、窓から見えているぎりぎりの距離にいる。だいたい30mぐらいだろうか。普通なら大声を出してもちゃんと聞き取れるかという距離なのだが、見えていればいいのか、フォスとはいつも通り会話できるのだった。

「(ピンク色の粒子ってどういう意味?)」
『ピンク? ・・・俺が知ってるのは食虫植物が蟲を引き寄せる時に放出されてたぐらいだな。』
「(え?)」

 アカヤは店員と食虫植物が結びつかなかった。周囲にはカップルも何組かいる。そのカップルの男性の大半が、ピンク色の粒子を放出していた。アヤカはなんとなくわかった気がした。これはかかわらない方がいいものと判断し、ピンク色の粒子を飛ばしてくる店員の所には近寄らないことにした。

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