3−3 制服と増員 アヤカがバイトに入っているファミレスのホール担当は3人いた。全員女性で、正社員が二人(30代と20代)、大学生のバイトが一人。そこにアヤカを加えた4人が、土曜日の閉店後、店長室に呼び出されていた。店長の席の横には、存在感を放っているハンガーラックがあった。そこには白、赤、桃、青、紺、緑、黄と7色のメイド風エプロンドレスがあった。察しのいい正社員二人は、既に顔が青ざめていた。 「ホール要員の制服をリニューアルします。・・・好きな色を選んでね。」 「あのー、私、こういうのもう似合わないと思うんですけど・・・。」 30代の正社員が抗議する。 「大丈夫。・・・これはね、スカートの長さと絞りを調節できるの。ロングもミニも自由自在よ。」 「でもー」 「この制服着用者には時給アップがあります。」 アヤカ以外の3人の目の色が変わった。 「じゃあ、選んで試着してみて。」 「あの、店長。」 「何、アヤカちゃん。」 「私、ホール担当ではないはずでは?」 「それがね、リニューアル品の話を上にしたら、いろいろ試してみていいって許可が出たのよね。・・・で、増員することにしました。」 「それが私となんの関係が?」 「アヤカちゃんはホール担当に移動してもらいます。」 「え?」 「もちろん時給アップはあるから。・・・で、どの色がいい?」 店長は問答無用という雰囲気を漂わせていた。アヤカはかなり店長の趣味が入っていると考えた。だが、時給アップは魅力的ではある。 「・・・じゃあ緑で。」 「うん、試着してみてね。アジャスターが仕込んであるから調節してみてね。」 帰り道。フォスは気になったことを聞いてみた。 『なあ、アヤカ。なんで緑なんだ?』 「(だって、フォスとお揃いでしょ?)」 『お、おう。』 その時のアヤカは、フォスの見た中で一番の笑顔だった。 |