2−3 植物と大地 アヤカとフォスは植物園に来ていた。 「(ここに何の用があるの?)」 『その前に説明しておきたいんだが、いいか?』 「(? ・・・うん)」 『人間族は自分の体を維持するのに食事が必要だろう?』 「(うん、そうだけど。)」 『じゃあ、俺は何を食べてると思う?』 今更ながらに、アヤカはファスが食事をしているところを見たことがなかった。ドラゴンというより妖精の印象だったので、花の蜜でもこっそりと隠れて吸っているのかと思っていた。フォスはアヤカの肩を離れてふわりと浮かび上がった。そしてアヤカの眼の高さで滞空する。その蝶の羽根はゆっくりと羽ばたいているが、その動きは普通の蝶からすると非現実的なぐらいゆっくりとしたものだった。普段、フォスはほとんど飛ばないので、アヤカは不思議に思った。 『見えるか?』 「(?)」 アヤカは意識を集中してみた。フォスへ向かって周囲から様々な色の粒子が集まってきているのが見える。 『妖精竜は周囲の植物や大地から力を分けてもらっている。これが俺の食事ってわけだ。ついでに、飛ぶ時もこんな風に力を分けてもらったのを使っているから疲れずにいつまでも飛んでいられる。』 「(・・・じゃあ、いつも飛んでないのはなんで?)」 『いつもアヤカが生活している場所だと、植物があまりないし、大地も分けてくれるほど力が無い。』 「(それって自然が無いってこと?)」 『そういう事だな。』 「(・・・そっか、ここだとフォスは沢山力を集められるんだ。)」 『ご明察だ。』 アヤカはその多種多様な光がフォスに集まっていく光景に見とれていた。 「(・・・綺麗。)」 『手を。』 「(?)」 アヤカが掌を上に差し出すと、フォスはその指先に着地する。長い尻尾をアヤカの手にクルリと巻きつけると、フォスは大きく息を吸い込んだ。それに合わせて集まってくる粒子が激増する。 「(!)」 アヤカは視界を埋め尽くす大量の粒子の流れに思わず目を閉じた。瞼を閉じてもわかるほどの光で周囲が埋め尽くされていた。だがそれも唐突に終わりとなる。 『もう目を開けていいぞ。』 アヤカは恐る恐る目を開けた。手には竜の雫が1粒あった。今までフォスが与えてくれたものよりも強い黄金の輝きを放っていた。一連の流れで、アヤカは理解した。 「(今まではフォスの力だけで竜の雫を作ってたってこと?)」 『そうだな。』 「(それってかなり疲れるんじゃぁ・・・)」 『ああ。』 「(もしかして、フォスの命を削っていたりしない?)」 『・・・流石、アヤカだな。』 アヤカは愕然とした。これまで何度、竜の雫をもらったことだろう。それまでずっとフォスの命を削ってきたことになる。 『お前の胸にはまだ病魔が潜んでいる。小さいころの環境のせいだと思うが、思ったより強い病魔のようだ。この際だから、俺も本気を出すことにした。』 「(本気?)」 |