4章 冷や飯(クールフード) 吾輩は猫である。・・・ゲフンゲフン。いや、吾輩は猫人族である。今、アキバの街には大変革が起きていた。そして吾輩も・・・。 「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 そして大変革を通り越して絶望が訪れた。吾輩の舌は、痺れていた。いや、より正確には燃えていた。公開されたレシピ(というか方法)を元に、好物の味噌汁作ってみた。しかし、味見をした瞬間、舌が火傷をした。他にいくつも思いついた料理を作ってみる。そこから導き出せる結論は・・・熱いものがまったく味見できないということだった。 「なぜにゃぁぁぁぁぁ!!!」 しかし、それでへこたれる吾輩ではない。熱い料理がダメなら冷たい料理で勝負すればいいのだ。そうしてくいだおれ横丁にオープンさせた店の名前を「冷や飯」と書いて”クールフード”とルビを振ることにした。 熱い日はそこそこ客が入るが、涼しい日はまったく客が来ない。後は物珍しさで来る一見さんぐらいだった。その日はあまりの客の無さで、もう閉めようかと考えていたとこに4人組が入ってきた。見かけない連中だった。守護戦士、吟遊詩人、召喚術師、そして霊媒師? ・・・確か北米サーバで神祇官のことだったか? 「お、ここは空いてるじゃねーか。どこも混み過ぎだよな。」 「まあ、プレイヤー人口が集中し過ぎてるみたいですからね。変な所が供給不足なんでしょう。」 「すいませーん、メニューくださーい。」 吾輩はどきどきしながら注文を待った。暖かい料理が無いというつっこみはなく、どんどん注文が入った。守護戦士なんぞは、大盛りの冷麺を3杯もおかわりする始末。女性陣(吟遊詩人と霊媒師)は、最後に注文したアイスクリームの味で盛り上がっていた。 「おーい、店主。勘定を頼む。」 「承知。」 「上手かったぜ。またちょくちょく寄らせてもらうからな。」 「料理を堪能していただいたのはありがたいのだが、そろそろこの店は畳もうと思っているのだ。」 「えー、アイスおいしかったよ。」 吟遊詩人の女性が横から割って入る。 「見てのとおり、吾輩の店は閑古鳥が鳴いておる状態でな。まあ、それに食材のストックも切れかけておることだし。」 召喚術師が眼鏡をくぃっとあげてニヤリと笑った。 「なるほど、拝見したところ特殊な偏りのあるメニューが原因とお見受けします。確かにこれから涼しくなる秋口にかけては、客足が遠のくのはどおりかもしれません。しかし、料理の腕は確か。私も堪能させていただきました。冷たい料理ながらも体を冷やさない工夫など、一流といっていいでしょう。しかし、あなたの落胆は、客入りだけではない、そこから導き出せる結論は・・・」 「・・・(ごくり)」 召喚術師の眼鏡がキラリと光った。 「・・・猫舌ですね。」 「そんなわけないでしょう。何言ってんの鈴木さんは。」 「・・・いや、そのとおりでござる。」 「え?」 ごまかしても仕方あるまい。吾輩の料理を美味いと言ってくれた方々だ。嘘を付く理由はなかった。吾輩はこの4人に熱い料理を作れない理由を説明した。そう、原因は猫舌によるものだ。 「探しに行けば?」 眠たげな瞳の霊媒師が、ぼそりと言った。 「な、何を?」 「耐熱・対火炎の護符見たいなものがあったらどう?」 「・・・リアンちゃん、ナイスアイデア!!」 「なるほど、魔具職人がいるということが確認されてますからね。必要な素材はさしずめ火山性のモンスターかワイバーンといったところでしょうか。」 打ちひしがれていた吾輩の心に、一条の光が差した気がした。 「そいつは面白そうだ。どうだい、俺達といっしょに行かないか?」 大柄な守護戦士が手を差し出した。吾輩はその手をがっちりと握った。 「よろしく頼むでござる。吾輩はハイネと申す。職業は暗殺者。獲物は弓でござる。」 そこからは自己紹介だった。 「俺はロコ。守護戦士だ。HPには自信があるから、壁は任せてくれ。」 「私はライラ。ライラ・ノルン。吟遊詩人よ。歌による援護とヘイトコントロールは任せて。」 「ターロ・ベルツリーと申します。召喚術師です。お見知りおきを。」 「・・・リアン・カルネ。霊媒師・・・は神祇官とだいたいいっしょだから。」 吾輩は全員と握手した。 「そういやリアン。富士山を見にいくの忘れてたよな?」 「うん。」 「なるほど、では火山性モンスターの線から進めてみましょうか。」 吾輩はカウンターの奥から、埃をかぶったマジックバッグを取り出した。 |
【解説】 ・まあ、キャラの名前については突っ込み多弾頭とは思います。CV=西川さんでどうですか?(滝汗) |